本当はお金はあるんだよ −障害者制度学習会−
2005年度市民講座を
開催しました


2006年2月5日、2005年度 CIL豊中 市民講座が、障害福祉センター・ひまわりの体育室で行われました。
当日は寒さが厳しい中、例年の市民講座よりも多い80名近くの人が参加され、施行開始が間近に迫った『障害者自立支援法』への関心の高さ、そして何より不安の強さを物語っていたと思います。

講師には、県立広島大学助教授の横須賀俊司氏と、豊中市障害福祉課主幹の吉田実氏がお越し下さいました。

まず、横須賀助教授の講演が行われましたが、氏が口にした第一声はこれでした。

「国には、本当はお金はあるんです。」


「イラク復興支援や防衛費などには、多額の予算を割り当てる。決してイラク復興支援が必要ないことはないが、それにしても本当にお金が無いのなら、他国の復興や、すぐに必要なわけではない防衛設備のために、敢えて億単位の予算を注ぎ込もうとはしないはず。そもそも国というのは、いくら財政が赤字になろうと、潰れないように出来ている。要は国が障害者のためにお金を回したがらないだけで、お金の有無自体の問題ではなく、割り振りの問題、ひいては政治の問題である。」

なるほど、確かにそうです。今まで国は何かに付け、「財政面で厳しい」と連発していましたが、その割には、注ぎ込むところには膨大な額の予算を注ぎ込んでいます(高速道路建設・新幹線建設・イージス艦建造など)。本当にお金が無くて貧困に陥っている政府という印象はとても持てませんでした。一体全体、国の「お金がない。」という得意文句は、真実なのか・・・・・?

横須賀氏の発言は、そういう疑問に対して、ズバリ核心を突いたものとなりました。

「CIL豊中市民講座 障害者自立支援制度学習会」の垂れ幕と、横須賀俊司教授


そのほか、講演では自立支援法について、

「ガイドヘルプは、地域生活支援事業(市町村裁量による事業)になると、支援費制度では認められなかった通勤・通学での利用について、一切規制がかからなくなる。なぜなら、国はもう関係ないから。」
「社会福祉減免は一般上限(月37,200円の負担上限)の人は対象外となる。」
「グループホーム入居者の個別減免は、自己申請しないとなされない。そして資産が350万円以上あったら対象外とされる。」
「入所施設での食費は利用者負担となる。そのため、『もう昼食は要らない』という利用者も続出するであろう。」


といった、極めて厳しい内容のことが言われました。

なお、グループホームが、重度障害の人がケアホーム、軽度障害の人がグループホームと名称が分かれるというのは周知のとおりですが、もっと具体的にいうと、入居者が介護の要る人の場合がケアホーム、要らない人の場合がグループホームと呼ばれるということです。

また、認定区分調査において、一次判定を不服とする場合、
認定審査会にかけて二次判定が行われるのは介護給付のみで、訓練等給付では行われないということです。



次に豊中市障害福祉課の吉田主幹による講演が行われ、この中で、

「民間の団体は、10月から新しい福祉類型に移行しなくてはならない。」
「デイサービス、授産施設といった名称は廃止される。」
「児童の程度区分は、ツール(区分判定ソフト)が開発されていないため、無しとなる。」
「豊中市としてのサービス支給の目標数値を、平成18年度中に出す。」


といったことが報告されました。
限られた時間の中で、倍速早送り以上のスピードで話をされた吉田主幹でしたが、

「ほかの自治体では、先ず認定区分を判定し、それから初めてニーズの拾い上げ(アセスメント)やより踏み込んだ支援計画を行われるが、豊中では判定を待たず、ニーズの拾い上げも同時におこなっていこうと思っている。これからも、何か知りたいこと、聞きたい情報があれば、極力出向いて行く。」


と力説、当事者市民に一筋の希望を与えたと思います。

障害福祉課 吉田主幹 参加者の方々



休憩時間を挟んで質疑応答がおこなわれましたが、減免措置を受ける条件のことや各類型の支給時間数のこと(これはまだ発表されていないが、恐らく介護保険並みになると思われる)、ガイドヘルプがどのくらい使えるのか、日常生活用具の負担はどうなるのか(応益負担+別口負担となる)など、様々な質問が集中、時間はアッという間に過ぎました。


今回の講座で最も印象に残ったのは、国のいわゆる『財政難』という問題に対して、
「お金がないというのはウソで、経済的問題ではなく政治的問題だ。」
と、ハッキリ明言されたことです。
これまで多くの当事者団体が、法案への反対運動をしてきました。しかしその抗議内容というのは、
「最初からすぐに予算がなくなるような見積もり方をするのが悪い。」
「障害者が生きていくのに最低限のサービスが支給されることは、権利である。」

というもので、必ずしも、「お金が無いということ自体、本当のことなのか?」という疑問は投げられていませんでした。
しかし、『お金が無い』というのが、国のカラクリ≠ナあると分かった以上、お金に対して遠慮することなく、より堂々と、正面切って国に抗議の声を上げていけるのではないか?と、勇気付けられたような心地もします。

質疑に応答する両講師 昨年に続いて司会を務めた、上田さん


これまでひたすら、厚生労働省に対して運動を展開してきました。しかしその厚生労働省も、根っこの部分でお金を握っている財務省の前では、逆らえないという現状があります。
そういう意味では、これからは寧ろ抗議のほこさきを財務省に向けて、
「障害者福祉に予算を回せ。」と、財務省相手の運動を展開していくべきなのかも知れません。

当日参加して下さったみなさん、そして講師を務めて下さったお二方、本当に有難うございました。



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