「知事に届けよう!障害者や家族の思い・大阪ネットワーク」に参加しました


橋下知事が誕生して約4ヶ月、大阪府の財政立て直しのためと称して、『聖域無き』という、小泉元首相バリの文言を頭に置いた財政改革が、掲げられています。
去る4月11日、橋下知事は、『大阪府 財政再建プログラム試案』、通称『PT案』を発表しました。

ところが、このPT案の内容というのは、これまで大阪府自体が築き上げてきた、障害者福祉の諸施策に対して、ことごとく予算の削減、または廃止が行われるというもので、金額にして実に15億円。府内の各障害者団体は、一様に驚きの声を上げました。
「このままでは、障害者は本当に生きていけなくなる。」
危機感を募らせた各団体は、大阪府庁を取り囲んで抗議の声を上げることになりました。
2008年5月13日(火)、10:00〜12:00まで、大阪城公園教育塔前広場と大阪府庁周辺にて、障大連の呼びかけにより、『PT案に抗議するアピール行動』が行われました。
当日は汗ばむほどの陽気の中、府内19の障害者団体の、3,000人以上の人が集結しました。

冒頭、障大連議長の楠敏雄さんが、決意表明をしたのに始まり、何人かの議員や、参加各団体の当事者が、次々に声明を出しました。

「予算が厳しいのは私たちだって分かる。今はどこも厳しいが、しかしだからといって、障害者が最低限生きていくのに必要なセーフティーネットまで無くしたり削ったりして、いいのか!?」
「橋下知事は、卓上で数字だけを眺めながら、実態に即さない、数字並べだけの財政改革をしている。医療や生活支援など、障害者の命にさえ直接かかわる制度をもカットするという内容は、非人間的としか言いようがない!」
「私たちは、今までにも十分痛められ、ガマンをしてきた。何も贅沢を言っているわけではない。生きていく上で最低限のサービスを求めているだけだ。それを削るとは、知事は行政としての自分の仕事を、きちんと理解しているのか?」
「グループホームを利用している者にとって、加算制度や住宅改造助成制度の廃止は、死活問題となる。また、ヘルパーが来てくれなくなったら、私たちは生きてはいけない。そして作業所を廃止されては就労への道も絶たれる。何としても今案を撤廃してほしい。」
「これまで大阪府自体が、障害者の地域生活の実現のために、いろいろと施策をおこなってくれた。今回の橋下知事のやり方は、ある意味において手のひらを返すものであり、断じて許すわけにはいかない。ただでさえお金のない私たちから、そうまでしてお金を削って、それで府民のための政策が出来ていると言えるのか!?」
「今こそ身体を張って闘わなければならない時だ。今回のPT案には愕然とした。もっと他のやり方は絶対にある。たとえば、御堂筋にイルミネーションを作るのに、20億もの予算を注ぎ込む必要があるのか?私たちの怒りを届けよう!」

決意表明をする、呼び掛け人の楠敏雄さん 精神障害の立場から訴える、
『ぼちぼちクラブ』の塚本正治さん

壇上に並んだ、主催団体職員と議員の方々 ユニークないでたちで登場したこの方は、
グループホームの存続を訴えていました。


ここで、今回橋下知事が打ち出したPT案によって、変動がある福祉施策の具体的内容を、ザッとではありますが、示してみることにします。

項目 これまでの施策 PT案による変更内容
医療費負担軽減策 精神通院医療は、国民健康保険対象の医療は負担なし。 
重度障害者医療は、月1,000円の負担上限あり。
精神通院医療負担は廃止。重度障害者医療費助成は削減。
負担上限は2,500円に引き上げて、上限以上の負担分は、市町村役場の窓口に行けば返還されるようにする(従って、強制先払いの自己申請後戻し制)。
移動支援負担軽減策 市民税課税世帯で月4,000円、非課税世帯で月2,000円の負担上限あり。 今年度で予算を10%カット(上限以上の負担は府と市町村で行われていたため、府のカット分は市町村に肩乗せとなる)した上で、負担上限を廃止(上限以上の負担は、全て各市町村の裁量に委ねる→格差が生じるのは必至)。
日常生活用具負担軽減 市民税課税世帯で24,000円、非課税世帯で12,000円の負担上限あり。 上に同じ。
グループホーム支援策 障害者自立支援法の施行により、国からの補助金が大幅にカットされ、その分、府が『加算制度』を設定。 今年度で加算の10%(1337万円)を削減、来年度以降、廃止(6人入居のグループホームの場合、年間80万〜180万円の運営費減額)。
住宅改造助成 年間100万円を上限に、助成。 今年8月で廃止。
作業所支援 大阪府加算として、15人以上の各作業所に対して年間330万円、15人未満に対して年間50万円の補助を実施。 今年度と来年度で10%(それぞれ3160万円、4740万円)削減し、2011年度に廃止(各作業所で45万〜65万の負担発生)。
小規模通所授産施設支援 制度化された時の国の補助単価が、それまでの府の作業所補助水準を下回っていたため、その分を府が加算。 今年度に府加算分の10%(1269万円)を削減し、来年3月限り(今年度限り)で廃止。
就労支援 2011年度までに、800人(現状の4倍)の一般就労の実現を目標。 削減・廃止の方向。
注:『今年度』および『今年』は2008年を指す(従って『来年度』・『来年』は2009年)。


この後、一同は大阪城公園から大阪府庁前に移動し、府庁を取り囲んでアピール行動を行いました。
2006年7月以来の『府庁取り囲み』となったわけですが、今回のほうがより厳しく、切実な状況の中での行動となりました。
府庁に向けての怒りの訴えも、一段と力が増していたように感じます。

3,000人あまりがギッシリ集結し、熱気はピークに達していました。橋下知事に対し、一歩も引かぬ決意で臨んでいます。
横断幕に、府庁取り囲みの際に活躍した街宣車。
屋根の上からマスコミが撮影しています。
アピール声明をする、『あるる』の東谷太さん 府庁前への移動を前に、全員で
シュプレヒコールを行う参加者たち



府庁前では、『障害者の生活を守れ!』シュプレヒコールを飛ばしながら、狭い歩道の上で、限られた時間ではありましたが、アピール行動をしました。
当日は多数のマスコミも取材に来ており、ヘリコプターも稼働していました。
隊列の上をヘリコプターが通るたびに、みんなはアピール文を書いた紙を、ヘリコプターに向けて力一杯振っていました。
こういう形のアピールも今回が初めてでしたが、夕方のNHKニュースでもかなり時間を取って報道されており、私たちの気持ちをそのまま代弁するようなコメントを、アナウンサーも出していました。
社会的にもこの問題が、昔に比べればはるかに認知されていることが、改めて確認されました。

今、大阪府に限らず、どこの自治体も財政難で、夕張市の事を知らない人も、恐らくいないと思います。
しかし、いかに財政難とはいえ、日々の生活に直結していて、命にさえもかかわる施策を、一気に廃止したり削減したりするのは、これはあまりにも乱暴で、殺人的と言っても過言ではない政策です。
かといって、『命だけは守る』という言い方をすると、これは捉えようによっては、『死なせさえしなければいい』と言っているように聞こえます。

障害者もごく当たり前に、地域で働き、そして暮らしていけるよう、当事者の声を聞いて支援をするのは、プラスアルファーのサービスでも何でもなく、行政としての、『人の生活を守る』という基本の仕事だと思います。

構える庁舎と、向かう隊列。そのコントラストの妙 庁舎前交差点で、信号待ちの間、シュプレヒコールを唱える

同じく府庁前交差点で、自立生活センター夢宙の
平下さん(奥)がマイクを握ります。
府庁横の歩道を、所定の位置に向けて移動。
『人間の生活をしたい!!』『我々の声をきけ!』のぜっけんを掛けて・・・・

ズラリと府庁前の歩道を取り囲む。 小さくしか写っていませんが、追跡取材をしていた
ヘリコプターです。2機飛んでいますね。

ヘリコプターに向けて一斉に、アピール文が書かれているビラを振ります。今回、ビラが黄色なのは、
『イエローカード』を意味しています。次のアピールの時は赤色『レッドカード』に、なるとかならないとか・・・・・。


※6月5日に発表された『大阪維新プログラム案』では、橋下知事は「障害者施策の削減は撤回する」と明言し、ひとまずホッと出来る部分も出てきました。これからも、注意深く府政の推移を見守っていきたいと思います。


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