第5回インクルーシブ教育を考えるシンポジウムに参加しました



2007年2月3日(土)、豊中市教職員組合と毎日新聞社の共催による『第5回インクルーシブ教育を考えるシンポジウム』が、豊中市立大池小学校体育館にて行われました。
2007年度から教育基本法改正に伴う『特別支援教育』がスタートし、特別支援≠フ名のもとに、障害児がみんなのいる教室から、違う教室に分けられることになります。長年にわたり、『共に学び、共に生きる』統合教育を実施してきた豊中市にとっては、この法改正は基本方針を根底から揺るがす、危機的なものとなっています。

改めて、「ともに学ぶことの大切さを確認しよう。」今回は、NPO法人夢風基金の代表である、牧口一二さんが講師を務めました。



牧口さんの講演は、小〜高校生時代の思い出話から始まり、
「体育の授業はいつも見学だったけど、運動会の騎馬戦で、上に乗る人として参加できたことがあった。あらかじめ周りが僕のことを考えていて、下で支える人は、とびきり強い人ばっかりにしてくれた。」
「小学生の時、軽いイタズラで松葉杖を隠されたこともあったけど、別の友達がおんぶして送ってくれたり、『しゃーないな』と自分で地面を這って帰ったりした。家で親に報告をしたら、『予備のがあるから、明日はそれを持って行き。』という感じで。無くなった松葉杖もすぐに見付かったりしてね。すごく自然だった。」
「友達といてて、自分だけ違うと感じたとか、特別扱いされたという事もなかった。子どもって、みんなスッと受け入れるよ。」
「『牧口がいる』ということで、周りが『じゃあ、どうしようか』と動いてくれる。ものすごく自然に、お互い助け合うという空気が出来てくるもんなんよ。」

など、笑いも交えて面白おかしく話してくれました。

「とよなか発/子ども・いのち」
第5回 インクルーシブ教育を考えるシンポジウム
と書かれた横断幕
講演する牧口一二(いちじ)さん


一方で、就職活動については大変な苦労をしたということで、
「松葉杖を付いているという理由だけで、能力も実力も試さずに断られた。それも54社受けて全部断られた。結局、僕自身の友達が立ち上げた会社に入れてもらう形になったのだけど、いかに世間の偏見が強いかということを、思い知らされた。このとき、初めて世間とのバリアを感じた。」
と、語っていました。



第二部では、牧口さんを含めて5名の人によるパネルディスカッションが行われ、現職の教員として松田存映さん、中田崇彦さん、橋本順子さん、障害児の親として下飼手香織さんがパネラーとなりました。コーディネーターは、毎日新聞社の遠藤哲也さんが務めました。

ディスカッションでは、
「学校教育って、本当に勉強・学力の側面だけから見ていっていいのか?今の国のやり方は、勉強についていけるかどうか、学力の向上が見込まれるかどうか、そして将来、生産性の面で役立つのかどうか?そういう尺度でしか、子どもを見ていないような気がする。」
「勉強はもちろん大切だけど、同じ場という空気を共有してお互いの存在を感じあい、ふれ合うことも必要。そういう体験が欠如した状態で、将来社会に出て大丈夫なのか不安。」

「最初はビックリしても、慣れれば自然に溶け込めあえる力が、子どもにはあるし、自然に『助け合う』という心を養っていけると思う。」
といった声が、次々聞かれました。

パネラーのみなさん 約300人が集まった会場風景


『教育』というのは、『教え、そして育む』の両面から成り立っていると思います。
日本の場合は、『教』だけが重要視されて、『育』のほうが、やや日陰を見る思いをさせられているのではないでしょうか?
教えた成果というのは、数字としてすぐに表れるので、目にも見えます。しかし育まれた成果というのは、ハッキリ数字で表れるものではなく、そのぶん見た目にも分かりにくいと言えます。
数字やデータが好きな日本の社会は、数字に表れやすい要素にばかり力を注ぎ込み、『感じて』初めて分かるという要素を、遠ざける教育を歓迎している、そんな風に感じた、この日のシンポジウムでした。



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