『自立支援法と事業運営』 〜変革期の障害福祉サービスの展開について〜
福祉事業所職員研修会が行われました




2007年2月16日(金)、17:30〜19:30まで、障害福祉センターひまわりにて、福祉事業所の管理者(施設長)、現場職員を対象とした職員研修会が開催されました。
これから、まだまだ障害者制度に動きが見られるであろうという、今の時代、福祉事業所はどのように運営されていくのがよいのか?福祉サービス従事者は、どのようにすればこれからの時代の流れに対応できるのか、それを考えてみようという、非常に大きく、深いテーマの研修となりました。

主催は、『豊中市障害者自立支援法を考える会』、講師は、特定非営利活動法人PASネット理事長で、複数の施設・事業を運営している法人に対して、運営・改革のスーパーバイザーをされている、上田晴男氏でした。

上田氏は先ず、
「措置制度の時代と違い、今は概ね3年に1回制度が変わる。だから今は、一つの制度が出来ても長続きはしないと捉えたほうがいい。言い方を変えれば、現在の制度がずっと続くという前提でビジョンを立てる組織運営は、時代に合わない。次は何年後にどういう方向に制度が変わるんだろう?という読み≠ェ出来ない、次の動きに対応出来ない事業所は、時代の波に取り残されてしまう。」
と、最初からかなりインパクトのある事を述べました。


シビアな話もコミカルに、しかしとことんストレートに進めて、
参加者の気持ちを引き付けていた、上田さん。


そして、これからの時代の流れに向けての、各事業所・各職員の情報収集能力に関して、
「今はインターネットという、大変便利なものがある。そこの、厚生労働省のホームページから、WAMNETという、福祉療育機構が運営しているホームページに入ると、そこでは、今日行われた厚生労働省の会議のようすを撮影した動画が、その日の夕方には全国に配信される。だから逆に、『知らなかった』と言えなくなる。特に運営者・管理者にとっては、早く情報収集することが必要になってくる。」
「これからは、国と自治体(市町村)の動きが重要になる時代だ。中間的存在ともいえる都道府県は、もうウェイトを占めなくなってくる。」
と述べ、手軽に情報が入るようになった反面、逆に情報を入れていない事に対しては言い訳出来ない厳しさがあるのだと、感じさせられました。


次に、自立支援法についての、上田さんの見解が述べられ、それによれば、自立支援法の基本的な考え方は以下の3点です。

@『地域自立生活』の普遍化・・・・・高齢者の増加に伴い、加齢による障害がある人も増えてくる。そうすると、何らかの支援が必要な障害者の数は、どんどん増え続けるから、それに対応する社会的仕組みを作っていかなくてはいかない。
A『支援』の総合化・・・・・今後、重複障害の人や、加齢によるさまざまな障害を持つ人が増えて、各障害ごとに分けた支援サービスでは、追いつかなくなってくる。高齢者と障害者では必要なサービスは違うと言われるが、それ以上に、一人ひとり違うのではないのか?よりトータル的にサービス出来る仕組みを作ることが、望ましい。
B市町村を『主体』とする地域化・・・・・実情は一人ひとり違うのだから、遠くからサービスを運んでくるよりも、身近な地域が力を持ち、おのおののニーズに合ったサービスを提供出来ることが必要。

決して現在の法運営はいいとは言えないが、自立支援法が元々唱えていた理念自体は、必ずしもおかしなものではない、ただ、実態を見ると問題が多いし、だからこそ法律もどんどん変わっている、と述べていました。

笑いあり、頷きあり、参加者もどんどん反応していました。


後半では、これからの時代を生き抜くための事業所形態とは?という内容になりました。上田氏いわく、
「1法人1事業所の体制では、運営が難しくなる。1つだけの事業所で全てをカバーすることは難しいし、今後、より総合的な支援が必要になるという事に加え、認定区分の問題が大きい。ある事業所は区分の軽い利用者ばかりとなり、別の事業所は区分が重い利用者が多い、という事態が起こり得る。そしたら出来る事業も『区分○以上が対象、区分○以下が対象』という制約がある以上、それぞれ限られてくるので、1法人が、3つ・4つの、それぞれ違う区分の利用者を抱える事業所を持つようになったら、事業所間で利用者数と区分のバランスを調整できる。この先、制度がどう変わるか分からないし、利用者の動きも固定的ではないから、それに柔軟に対応できる法人にしていかなくはならなくなる。そして新しく事業所を立ち上げる際も、例えば、建物は新しい立派な物をドーンと建てるのではなく、賃貸にして、可変的な態勢をとっておく方が賢明だと思う。」

事業所運営、ひいてはその大元となる法人運営の根幹に関わる、重大な発言をしていました。
会場内の空気もピーンと緊張が走ったものとなりましたが、これを機に、人を支援するための『地域の力』が、より充実していく事が重要だと思います。


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